昨年は、大きな台風が関東地方を直撃し、甚大な被害をもたらしました。正直言って、台風でこんなに大きな被害が起こるとは、私も全く思っていませんでした。
台風が襲ってしばらくした後に、大きな被害のあった千葉県市原市に行く機会がありましたが、町を襲った被害を見て驚いてしまいました。こんなに豊かになった日本でも、自然には勝てないものだとあらためて思いました。
ところで、大きな自然災害があると、よく「想定外」という言葉を我々は使います。そして、昨年の自然災害を見て私が思ったのは、そもそも自然に「想定内」ということがあるのだろうかということです。
例えば、テレビを買ってすぐ壊れたのなら、お店に文句を言ってよいと思いますし、これは確かに「想定外」だと思います。なぜならテレビは人工物で、人工物には設計図があり、どういう風に動くのかということが予め決まっています。ですから、想定通り動かないことに対して文句を言うことは、理にかなっています。
しかし、自然は違います。自然は人が作ったものではありませんから、そもそもどのように動くのかが分かっていません。それなのに我々は、自然に対して「想定外」という言葉を無邪気に使います。
当たり前ですが、人は自然の一部です。ですから、人そのものも未知の存在で、多くの謎に包まれています。医学は発達しましたが、人の中身は未だにほとんど謎だらけです。もし、テレビのように正確な設計図があれば、どんな病気も治るかもしれません。
保育園は、そんな自然の一部である子どもたちを相手にいつも保育を行っています。ですから、今日も保育園では、「想定外」で、謎のようなことが沢山起こっています。そのお陰で、いつも保育園は驚きと発見にあふれています。そして、その驚きと発見を喜びにして、保育園の職員は毎日保育にあたっています。
現代に生きるわれわれは、周りはいつも自分の思った通りに動くものだと、勝手に期待して生きています。だから、そうならないとがっかりし落ち込みます。「想定外」を発見と捉え、発見の驚きを喜びに変えて、私は今年の一年を過ごしていけたらと思います。あけましておめでとうございます。

理事長　稲垣