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《上野動物園のゴリラ》平成二十六年十月一日

更新日:2020/03/15

昨年の六月頃にラジオを聴いていると、元・上野動物園の園長だった方が、次のような話をしていました。
上野動物園では、約五十年前にゴリラの檻にそれまでの鉄製の柵に変えて強化ガラスを設置したそうです。鉄製の柵に比べ強化ガラスは死角がなくて見やすくなるだろうという事で、上野動物園では初めて強化ガラスの檻を設置したそうです。
しかし、初めて設置して見ると思いもよらない大きな問題が発生しました。ガラスの檻を設置してから突然、ゴリラが下痢をし始めたそうです。治療法も分からず、原因も分からずほとほと困ってしまったんだそうです。そんなある時、ゴリラの檻の非常用の鉄の柵が誤作動で降りてしまうという事故が起きました。初めての試みだったので強化ガラスだけでは不安だったのでしょう。万が一の時の為に設置していた鉄の柵が誤作動を起こして、降りてしまうという事故が発生したそうです。
すると不思議な事に、ゴリラの下痢がピタッと止まったのだそうです。要するに、人間とゴリラの間を隔てる鉄の柵が無くなってより不安に思っていたのは、人間ではなくゴリラの方だったという事なのです。
私たち人間の方から見れば、ゴリラが人間を襲うのではないかと心配していましたが、ゴリラの方から見れば人間に襲われるのではないかと不安で不安で体調を崩し、下痢をしていたというのが真実なのでしょう。言われてみれば、本人の気持ちに反して拉致され、動物園に連れてこられているのはゴリラの方です。人間の方は、自ら望んで動物園に足を運び、好きでゴリラを見ているわけです。両者を分ける柵が無くなってより恐怖やストレスを感じるのは、ゴリラの方なのは当たり前の事です。
よく、「相手の立場に立って考えなさい」と言いますが、これはなかなか難しいものです。動物園のプロの飼育係でも下痢をするほど怯えているゴリラの気持ちが分からないのですから、私のような鈍感な人間には、人の心を推し量るなんて事は出来るはずがありません。

*日付は、文章を作成した日付となっています。
*その後の私のコメントが付いているものもあります。



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